1. なぜ、多くのオウンドメディアは途中で更新が止まってしまうのか?「オウンドメディアを立ち上げたものの、最初の数ヶ月で更新が止まってしまった…」 「記事のネタが尽きてしまい、担当者のモチベーションも下がっている…」 「成果が見えないため、社内から『本当に意味があるのか?』という声が上がり始めた…」これは、オウンドメディア運用において、非常によく聞かれる、そして最も深刻な課題です。シリーズ第1弾、第2弾を通じて、オウンドメディアが企業の「資産」となり得ること、そしてその成長にはSEOという視点が不可欠であることを解説してきました。しかし、その輝かしい未来像とは裏腹に、多くのメディアが「継続」という壁にぶつかり、計画倒れになってしまうケースは少なくないのが現実です。なぜでしょうか?それは、決して担当者の努力や根性が足りないからではありません。原因はただ一つ、オウンドメディア運用を個人に依存した「属人的な運用」として進めてしまい、誰でも続けられる「仕組み」を設計できていないからです。この記事では、あなたが同じ壁にぶつからないために、メディア運用を「コスト」ではなく「投資」として成功させるための、具体的な「仕組み化」と「継続のポイント」を分かりやすく解説していきます。 2. 属人化を防ぐ「運用ルール」設計の3つのポイントオウンドメディアが途中で止まってしまう最大の原因は、運用が特定の個人のスキルや熱意に依存してしまう「属人化」にあります。担当者が異動・退職した途端に更新が止まる、といった事態を避けるためには、誰が担当になってもメディアが回り続ける「仕組み」=「運用ルール」を最初に設計することが不可欠です。ここでは、最低限これだけは決めておきたい、という3つの重要なルールをご紹介します。① 編集会議の「アジェンダ」を固定する「とりあえず集まって、最近どう?」から始まる会議では、何も決まりません。毎週、あるいは隔週で行う編集会議は、常に同じ議題(アジェンダ)に沿って進めることで、議論の質と意思決定のスピードが格段に上がります。このアジェンダであれば、会議を60分で効率的に進められます。・アジェンダの例: (1) KPIの進捗確認(10分):先週公開した記事のPV数や、メディア全体の問い合わせ件数など、目標数値の進捗を確認する。 (2) 今週公開する記事の最終確認(15分): 今週公開予定の記事の最終チェックを行い、公開承認をする。 (3) 来月以降の記事企画の壁打ち(30分): 次に制作する記事のテーマや切り口について、チームでブレインストーミングする。 (4) 課題と改善アクションの決定(5分): 現在の運用における課題を共有し、次週までに誰が何をやるかを決定する。 ② コンテンツ品質の「チェックリスト」を作る記事の品質は、ライター個人の能力に依存するべきではありません。「この記事は、公開してOKか?」を客観的に判断するための、シンプルなチェックリストを用意しましょう。これにより、誰が書いても、メディアとしての品質基準をクリアできるようになります。・ チェックリストの例: ☑ タイトル: ターゲット読者の悩みに寄り添い、クリックしたくなるか? ☑ 導入文: 記事を読むことで得られるメリットが、冒頭で明確に伝わるか? ☑ 本文の裏付け: 主張には、客観的なデータや具体的なエピソードといった裏付けがあるか? ☑ 表現の分かりやすさ: 専門用語を多用せず、初心者にも理解できる言葉で書かれているか? ☑ CTA: 記事の最後で、読者が次にとるべき行動が明確に示されているか?③ 社内専門家への「ヒアリングシート」を用意するオウンドメディアの価値の源泉は、社内に眠る「一次情報」です。しかし、多忙な営業担当者やエンジニアに、いきなり「何か面白い話ないですか?」と聞いても、記事のネタは引き出せません。事前に質問項目をまとめた「ヒアリングシート」を用意することで、相手は話す内容を準備でき、短時間で質の高い情報を効率的に収集できます。・ ヒアリングシートの項目例: – 最近、お客様から受けた、印象的な質問や相談は何ですか? – お客様が、競合ではなく自社を選んでくれた、決め手は何でしたか? – 多くの人が誤解している、この業界の「当たり前」はありますか? – お客様の課題を解決できた、最も印象的なエピソードは何ですか?(その時の状況や、お客様の反応も教えてください) 3. ネタ切れを撲滅する「コンテンツ企画」の仕組み化運用が止まってしまうもう一つの大きな原因が、「次に何を書けばいいか分からない」というネタ切れです。担当者が一人でうんうん唸っていても、アイデアは枯渇してしまいます。コンテンツ企画もまた、個人のセンスに頼るのではなく、継続的にアイデアを生み出し続ける「仕組み」として設計することが重要です。① 読者の「悩み」をすべての起点にする最もやってはいけないのが、「自社が書きたいこと」を起点に企画を考えてしまうことです。読者が求めているのは、自社の宣伝ではなく、自分たちの「悩みを解決してくれる情報」です。(1)企画の第一歩: まずは、ペルソナ設計(第1弾の記事で解説)をもう一度見返しましょう。そして、「彼/彼女が、今、仕事で何に困っているだろうか?」と、想像力を働かせます。(2)悩みの収集方法: – カスタマーサポートへのヒアリング: 「ユーザーから寄せられる、よくある問い合わせトップ3を教えてください」と依頼します。 – 営業担当者へのヒアリング: 「最近、お客様からよく聞かれる質問は何ですか?」と聞いてみましょう。 – Q&Aサイトの活用: Yahoo!知恵袋などで、自社の業界に関連する悩みが投稿されていないかチェックします。② 「キーワードリサーチ」で悩みを言語化する顧客の悩みを集めたら、次にその悩みが、Googleなどの検索エンジンで「どのような言葉(キーワード)で検索されているか」を調べます。読者が使う言葉で記事を書くことで、初めてあなたのコンテンツは、それを必要としている人に見つけてもらえるようになります。・ キーワードリサーチのコツ: – サジェストキーワードの活用: Googleの検索窓に悩みのキーワード(例:「BtoB マーケティング」)を入力すると、関連してよく検索されるキーワードの候補(「BtoB マーケティング 手法」「BtoB マーケティング 成功事例」など)が表示されます。これらはすべて、読者の具体的なニーズを反映しています。 – 競合記事の分析: 競合のオウンドメディアで、特にSNSでよくシェアされている記事や、検索上位の記事が、どのようなキーワードを狙っているかを分析するのも有効です。 ③ 「コンテンツカレンダー」で企画をストックする集めた「悩み」と「キーワード」を基に、具体的な記事の企画案をリストアップし、それらを「コンテンツカレンダー(企画管理シート)」にストックしていきましょう。・コンテンツカレンダーの項目例: – 公開予定日 – 記事タイトル(仮) – ターゲットキーワード – 想定読者(ペルソナ) – 記事のゴール(読後、読者にどうなってほしいか) – 担当ライター – 進捗状況(企画中/執筆中/校了)このカレンダーがあるだけで、「次に何を書くか」に悩む時間は大幅に減らせます。編集会議では、このストックの中から、次にどの企画を進めるかを議論するだけで良くなるのです。 4. 社内を巻き込むための「成果の可視化」と報告術運用が継続できない、もう一つの大きな壁が「社内からの協力が得られない」ことです。特に、成果が見えにくい初期段階では、「あのメディア、本当に意味があるの?」という冷ややかな視線に、担当者は孤独な戦いを強いられがちです。この状況を打開するには、オウンドメディアの成果を、PVやCV数といった直接的な指標だけでなく、事業全体への貢献という、より広い視点で「可視化」し、社内に粘り強く共有していくことが不可欠です。 ① 成果を測る「3つの評価軸」月次の報告会などでは、単に「PV数がこれだけ増えました」と報告するだけでは、経営層や他部署の協力は得られません。以下の3つの軸で成果を報告することで、メディアの価値を多角的に伝えましょう。 (1) 集客(量): – 見るべき指標: 自然検索からの流入数、新規ユーザー数 – 伝えるべきこと: 「広告費をかけずに、これだけの新しいお客様が私たちのサイトに興味を持ってくれています」 (2) エンゲージメント(質): – 見るべき指標: 記事の読了率、平均滞在時間、記事からの回遊率 – 伝えるべきこと: 「訪れたユーザーは、ただ見るだけでなく、私たちのコンテンツをじっくりと読み込み、他のページにも興味を持ってくれています」 (3) 事業成果(リターン): – 見るべき指標: 問い合わせ件数(CV)、ホワイトペーパーDL数、そして営業部門での活用実績 – 伝えるべきこと: 「この記事は、営業担当者がお客様への提案時に活用したところ、非常に反応が良かったそうです。直接的な問い合わせだけでなく、商談の質を高めるという形でも、事業に貢献し始めています」② 営業部門を最強の「味方」にするオウンドメディアの最大の理解者は、日々顧客と向き合っている営業部門であるべきです。彼らにとって、質の高い記事は、顧客の悩みに応える強力な「営業ツール」となり、自身の成果にも直結します。このメリットを伝え、積極的に巻き込んでいきましょう。・ 具体的な連携方法: – ネタの提供源になってもらう: 定期的に営業担当者にヒアリングし、「お客様からよく聞かれる質問」を記事のテーマにする。 – コンテンツの活用を促す: 作成した記事を「お客様のこんな悩みに答える内容です」と案内し、メールや商談で活用してもらう。 – 成果をフィードバックしてもらう: 「この記事を送ったお客様の反応が良かった」「この記事のおかげで、受注に繋がった」といった定性的なフィードバックを積極的に収集し、社内に共有する。③ 経営層を納得させる「費用対効果」の示し方経営者が最も知りたいのは、投下したコストに対して、どれだけのリターンがあるかです。・ 広告費との比較で価値を伝える: 例えば、オウンドメディア経由で月間1,000人の集客ができていれば、仮にリスティング広告で同等の流入を得ようとした場合に、いくらの費用がかかるのか「広告費換算価値(※仮に広告で同等の流入を獲得した場合の費用換算)」を算出します。「今月は、広告費に換算して約〇〇万円分の集客効果がありました」と報告することで、メディアの資産価値を分かりやすく伝えることができます。これらの工夫を通じて、オウンドメディアを「マーケティング部門だけの孤独な取り組み」から、「全社で育てる事業の武器」へと進化させていきましょう。【おわりに】この記事では、オウンドメディア運用を「仕組み化」し、継続的に成果を生み出すための具体的なポイントを解説しました。「属人化を防ぐルール設計」「ネタ切れを撲滅する企画術」「社内を巻き込む成果の可視化」といった仕組みを取り入れることで、あなたのメディアは着実に「資産」へと育っていきます。しかし、この計画を自社だけで実行し、成果に繋げるのは容易ではありません。私たち”営業の伴走さん”は、過去の数々の失敗経験から生まれた「実行伴走型」の支援を得意としています。もし「計画について客観的な意見が欲しい」「実行リソースが足りない」と感じたら、まずは無料の壁打ち相談へお気軽にお声がけください。