1. はじめに:その営業資料、自己流になっていませんか?渾身の営業資料を作成したのに、なかなか成約に繋らない。もしそう感じているのであれば、その原因はデザインやトークスキル以前に、話の土台となる「構成」にあるのかもしれません。多くの企業で見られる「伝わらない営業資料」には、以下のような共通点があります。・顧客の課題よりも、自社製品の機能説明に偏っている・情報の詰め込みすぎで、一番の魅力が伝わらない・資料の質が担当者ごとに異なり、「勝ちパターン」が共有されていないこうした悩みの根本原因は、顧客の購買心理を無視した自己満足な構成です。顧客の心を動かし、行動を促す営業資料には、必ず論理に基づいた「型」が存在します。本記事では、BtoB事業のプロである私たちが、数々の企業の営業支援で成果を出してきた「売れる営業資料の構成テンプレート」を、基本から応用まで余すところなく解説します。読み終える頃には、自社資料の課題が明確になり、すぐに改善策を実行できるようになります。 2.結論:これが「売れる営業資料」の鉄板構成テンプレート早速ですが、結論です。私たちが様々なBtoB企業で成果を実証してきた、営業資料の基本構成は顧客の購買心理に沿って以下の9つの要素で成り立っています。この構成の最大のポイントは、いきなり自社製品の話をするのではなく、顧客の「課題」を起点にストーリーを展開している点です。顧客と同じ目線に立ち、課題に共感し、その解決策として自社のソリューションを提示する。この一連の流れが、顧客の深い納得感と信頼を醸成します。また、ご指摘の通り、⑨会社概要と⑧料金・プランの順番は、商談の状況に応じて入れ替えることも有効です。次章では、これら9つの構成要素それぞれについて、「何を」「なぜ」書くべきなのかを具体的に解説していきます。 3.【基本編】営業資料の構成要素と、その「目的」を徹底解説前章でご紹介した9つの構成要素について、それぞれ「何を書くべきか」に加え、「顧客の購買プロセスのどの段階に有効か」という視点で解説します。ご自身の資料に何が足りないか、チェックリストとしてご活用ください。コンテンツ企画もまた、個人のセンスに頼るのではなく、継続的にアイデアを生み出し続ける「仕組み」として設計することが重要です。① 表紙目的:(認知段階)誰に向けた、何の資料であるかを一瞬で伝えるため 表紙は、資料全体の「顔」です。多忙な決裁者は、まずここで自分に関係があるかを判断します。ここでつまずかないよう、必要な情報を簡潔に記載しましょう。・宛名(〇〇株式会社 御中)・提案タイトル(〇〇に関するご提案)・自社名、ロゴ・作成日② 目次目的:(興味・関心段階)話の全体像と流れを伝え、相手に心の準備をしてもらうため これから話すことの地図を示すことで、相手は安心して話を聞くことができます。また、議論が脱線した際に本筋に戻しやすくなる効果もあります。特に、多忙な決裁者が後から資料を見返す際に、必要な情報へすぐにアクセスできるという利点もあります。・主要な見出しをリストアップ・対応するページ番号③ 現状把握目的:(課題認識段階)顧客の状況を正確に理解していると示し、信頼関係を築くため 「この会社は、我々のことをよく分かってくれている」、この認識を顧客と共有することが、提案の土台となります。事前のヒアリング内容を基に、客観的な事実を整理して記載します。・ヒアリングで伺った顧客の現状(体制、業務フローなど)・顧客自身が認識している課題・関連する市場の動向や客観的なデータ④ 課題の深掘り目的:(課題認識段階)顧客も気づいていない「真の課題」を提示し、専門家としての価値を示すため 顧客が感じている表面的な問題の、さらに奥にある根本原因を指摘するパートです。課題を放置した場合のリスクや、解決することで得られるインパクトを伝え、「なるほど、そこが問題だったのか」という気づきを与えます。・表面的な課題の根本原因・課題を放置した場合のリスク、機会損失・顧客がまだ気づいていない「隠れた課題」の提示⑤ 解決策の提示目的:(比較検討段階)提示した課題を【論理的根拠】に基づき「どう解決できるのか」を具体的に示すため ここで初めて、自社の製品やサービスが登場します。課題と解決策が明確に紐づいていることが重要です。「なぜこの方法が最適なのか」という論理的な根拠も合わせて提示しましょう。・課題解決によって実現する「理想の姿」・理想を実現するための具体的な提案内容・なぜ自社のソリューションが最適なのかという根拠⑥ 導入事例・実績(具体的な成果)目的:(比較検討段階)提案内容が「絵に描いた餅」ではないという【客観的証拠】を証明するため 「本当に効果があるのか?」という相手の不安を、客観的な事実で払拭します。特に、自社と似た業界・規模の企業の事例は、顧客が自社に置き換えて考えやすいため非常に効果的です。・類似企業(業界、規模、課題)の導入事例・導入前と後の変化を示す具体的な数値(Before/After)・担当者の喜びの声(お客様の声)⑦ 導入後の未来目的:(購入決定段階)導入後の成功イメージを具体的に想像させ、【感情的な期待値】を高めるため 製品の機能ではなく、導入によって顧客のビジネスや働き方が「どう良くなるのか」という価値(ベネフィット)を語ります。課題から解放された先の、ポジティブな未来を一緒に描くパートです。・課題解決後の、顧客の事業や業務の姿・導入後のフォロー体制やサポート内容⑧ 料金・プラン目的:(購入決定段階)投資対効果を明確にし、価格への納得感を得るため 価格の提示は、単なる金額の提示ではありません。解決される課題の大きさと比較し、「これだけの価値があるなら安い」と感じてもらうことがゴールです。その際、「松竹梅」のようなプランを用意し、「梅(最低)プランでも十分に課題解決できるが、松(上位)プランならこれだけの追加価値がある」という比較軸を示すと、相手はより納得しやすくなります。・複数のプランとそれぞれの提供範囲・費用対効果の明示・導入までのステップと期間⑨ 会社概要・問合せ先目的:(購入決定段階)取引先として信頼できる会社であることを伝え、次のアクションを促すため 提案の最後に、自社が信頼に足るパートナーであることを伝えます。企業理念や実績を簡潔に示し、安心して取引できることをアピールしましょう。・会社名、所在地などの基本情報・企業理念や事業実績・担当部署、担当者名、連絡先 4.【応用編】相手で使い分ける2つの構成パターン第3章で紹介した9つの要素から成る基本構成をベースに、より成果を最大化するためには、相手の状況に合わせて構成の力点を変える応用技術が有効です。ここでは、特に重要な「新規顧客向け」と「既存顧客へのアップセル向け」の2つのパターンについて、構成のポイントを解説します。この図では、「課題発見型」と「成功拡大型」で、それぞれどの構成要素に重点を置くべきかを比較しています。① 新規顧客向け:課題発見型ストーリー(シーン例:Web問合せからの初回訪問で、複数部署の担当者が同席している場面)判断基準: 初回提案、信頼関係がまだ浅い、複数の意思決定者が関わる場合 まだ信頼関係が構築されていない新規顧客には、まず「この会社は我々のことを理解してくれている」と感じてもらうことが最優先です。そのため、提案の前半部分に特に力を入れます。・「③現状把握」と「④課題の深掘り」に最も時間をかける 事前のリサーチを徹底し、顧客自身も気づいていなかったインサイト(洞察)を提供します。その上で「⑤解決策の提示」へシームレスに繋げることで、「この会社なら任せられる」という絶対的な信頼感を獲得することが目的です。その際、競合案や現状維持のリスクと比較して、自社提案の優位性を示すことが重要です。・最後に次アクションを明確にする 提案の終わりには、次に必要な資料、関係者、意思決定の期限などを具体的に提示し、商談を前進させます。② 既存顧客向け:成功拡大型ストーリー(シーン例:定例報告会で手応えを感じ、担当者経由で役員へ追加提案を行う場面)判断基準: 既存契約があり、前回のKPIを達成済みで、さらなる拡張テーマがある場合 すでに取引実績があり、信頼関係が前提となる既存顧客への提案では、過去の実績を基に「さらなる成功」を提示することが重要です。・「⑥導入事例・実績(具体的な成果)」と「⑦導入後の未来」に力点を置きます。 まずはこれまでの取り組みで得られた成果を、具体的なデータで一緒に振り返ります。その上で、追加投資によって得られる、より具体的で説得力のある未来を提示します。最後に「⑧料金・プラン」について、これまでの成果から算出される「増分ROI(追加投資による投資対効果)」を明示し、費用対効果の高い追加投資であることを示すことで、価格への納得感を醸成します。・最後に次アクションを明確にする こちらも同様に、次の意思決定に必要な情報や期限を明確に合意し、プロジェクトを停滞させないことが肝心です。まとめ:結論として、顧客の購買プロセスや信頼関係の深さに合わせて、構成の重心を変えることが成果へのカギとなります。まずは基本の型を身につけ、その後、相手に応じて最適なストーリーを組み立てられるようになりましょう。【おわりに】本記事では、成果を出す営業資料の「型」として、基本となる9つの構成要素から、相手の状況に応じて使い分ける応用パターンまでを解説しました。この構成テンプレートを活用することで、属人化しがちな資料作成のレベルをチーム全体で引き上げることができるはずです。しかし、このテンプレートを本当に機能させるためには、その「器」に何を盛り込むか、つまり、顧客の課題をどれだけ深く理解し、自社の強みを的確な言葉で表現できるか、という「中身」が最も重要です。まずは本記事のチェックリストを参考に、既存の営業資料を一度点検してみてはいかがでしょうか。日々の業務に追われる中で、この最も重要な「戦略設計」の部分に時間を割くのは容易ではありません。私たちGOOD RIGHTは、過去の数々の失敗経験から生まれた「実行伴走型」の支援を得意としています。もし「自社の強みがうまく言語化できない」「構成案について客観的な意見が欲しい」「分かってはいるが、実行リソースが足りない」と感じたら、まずは無料の壁打ち相談からお気軽にお声がけください。