1. はじめに:優れた構成も「見た目」で損していませんか?第1弾の「営業資料」の作り方①【構成編】では、成果を出す営業資料の骨格となる「構成テンプレート」について解説しました。もちろん、前回の記事を読んでいない方でも問題なく理解できるよう、本記事では「デザイン」に絞って解説しますのでご安心ください。 しかし、どれだけ優れた構成やロジックも、その「見た目」が分かりにくければ、相手に正しく伝わりません。 ・✕ 文字がぎっしりで読む気が起きない ・✕ どこが重要か不明で、ポイントが伝わらない ・✕ 全体的に素人っぽさ、信頼性に欠ける もしあなたの資料がこのように感じられるなら、非常にもったいない状態です。なぜなら、営業資料におけるデザインとは、単なる装飾ではなく、練り上げた構成を顧客に届けるための「最大の武器」だからです。 本記事では、デザイナーではない方でも、明日からすぐに実践できる「成果に繋がるデザインの3つの基本原則」を解説します。この記事を読めば、あなたの営業資料の分かりやすさと説得力は、格段に高まるはずです。2. 営業資料におけるデザインの目的とは「美しさ」ではなく「伝わりやすさ」多くの方が「デザイン」と聞くと、「センスの良い人が作る、美しいもの」を想像しがちです。しかし、ビジネス、特に営業資料におけるデザインの目的は、美術館に飾られる絵画を作ることではありません。営業資料におけるデザインの最大の目的は、「練り上げた構成(メッセージ)を、100%正しく、そして最も効果的に相手に届けること」です。優れたデザインは、情報を邪魔せず、正しく見せるための「透明な器」のようなものだと考えてください。器自体が派手すぎると、中身(本当に伝えたい情報)の味が分からなくなってしまいます。デザインは主役ではなく、あくまでメッセージという主役を輝かせるための、最高の脇役なのです。この「伝わりやすさ」を最大化するために、デザイナーではない方でも誰でもすぐに実践できる基本ルールが存在します。次章では、その中でも特に重要な「3つの基本原則」について、具体的に解説していきます。3. これだけ押さえればOK!成果に繋がるデザイン3つの基本原則前章で解説した「伝わりやすさ」は、これから紹介する3つの基本原則を守るだけで、飛躍的に向上します。どれも専門的な知識は不要で、すぐに実践できるものばかりです。① 全体の印象を決める「配色」と「フォント」資料全体の「世界観」を演出し、信頼性や専門性を左右するのが「配色」と「フォント」です。・配色のルール:「ベース70%・メイン25%・アクセント5%」で色を絞る まず、スライドの背景となる「ベースカラー」(白や薄いグレー)、タイトルや見出しに使う「メインカラー」(企業のロゴ色などがおすすめ)、そしてグラフの最重要データなど、本当に強調したい箇所にだけ使う「アクセントカラー」(メインの反対色など)の3色を決めます。色数を絞ることで、どこが重要なのかが一目で分かる、統一感のある資料になります。・フォントのルール:「読みやすさ」を最優先し、種類は1〜2つに絞る 資料のフォントは、奇をてらわず、誰のPCでも表示される標準的なゴシック体(Windowsなら「メイリオ」「游ゴシック」、Macなら「ヒラギノ角ゴシック」など)を使いましょう。同じフォントの中で「太さ」や「大きさ」を変えることで、情報の重要度を表現するのがプロのテクニックです。(※デザイン性の低い「MS Pゴシック」のような、環境によって表示が崩れる可能性のあるフォントは避けましょう)② 情報を整理する「余白」と「レイアウト」スライド上の情報が整理されていると、書き手の思考が整理されている印象を与え、説得力が増します。・余白のルール:「余白」は意味のあるデザイン要素と心得る 文字や図を詰め込みすぎると、読み手はどこから読めば良いか分からず、思考が停止してしまいます。「余白を恐れない」ことが、素人っぽさから脱却する第一歩です。具体的な目安として、スライド全体に占める文字や図などの要素は、多くても面積の半分以下に収めるように意識すると、自然と余白が生まれます。・レイアウトのルール:「見えない線」で要素を揃える テキストの左端、図の上端など、スライド上の各要素が「見えない線」で繋がっているように配置を揃えるだけで、驚くほど資料は整然とします。PowerPointの「ガイド」や「整列」機能を活用し、全ての要素が意図を持って配置されている状態を目指しましょう。③ メッセージを際立たせる「図解」と「グラフ」複雑な情報やデータは、文章で説明するよりも、視覚的に見せた方が瞬時に伝わります。・図解のルール:「1スライド=1メッセージ」の原則を徹底する 文章で説明すると長くなる関係性や流れは、シンプルな図解に変換しましょう。もし、どうしても伝えたいメッセージが複数ある場合は、潔くスライドを分割することを検討してください。箇条書きをフローチャートにしたり、相関関係をマトリクス図にしたりすることで、言いたいことが一瞬で伝わるようになります。・グラフのルール:伝えたいメッセージに合ったグラフを選ぶ グラフは、データを見せるための道具ではなく、メッセージを伝えるための道具です。 – 比較なら「棒グラフ」 – 推移なら「折れ線グラフ」 – 内訳なら「円グラフ」 といった基本を押さえ、最も伝えたいデータだけをアクセントカラーで強調するなど、「作り手の意図」が明確に伝わるグラフを心がけましょう。また、見た目の派手さから多用しがちな「3Dグラフ」は、数値を歪めて見せる可能性があるため、ビジネス用途では避けるのが賢明です。4.【実践編】PowerPointですぐに使えるテクニック前章で解説した3つの基本原則が、実際の資料でどのように活かされるのかを、具体的なビフォーアフター形式で見ていきましょう。ここでは、多くのビジネスパーソンが使い慣れているPowerPointを想定して解説しますが、GoogleスライドやCanvaなどでも応用可能です。① 文字だらけのスライドを改善する最もよく見られる失敗例が、伝えたいことを全て文章で書き起こしてしまうケースです。・悪い例(Before) スライドが長い文章で埋め尽くされている。これでは、聞き手は「読む」ことに集中してしまい、あなたの「話を聞く」ことができません。結果として、プレゼンターがただスライドを読み上げるだけ、という状況に陥りやすくなります。・良い例(After):要点を絞り、視覚的に見せる まず「1スライド=1メッセージ」の原則に従い、このスライドで最も伝えたい結論だけを、大きな文字でスライド上部に配置します。 – 補足情報は、3つ程度の短い箇条書きに要約します。 – 最後に、文字や図版以外の「余白」を十分に確保することで、圧迫感がなくなり、メッセージが際立ちます。② 意図が伝わらないグラフを改善するPowerPointやExcelのデフォルト機能でグラフを挿入しただけでは、どこを見るべきかが分からず、メッセージが伝わりません。・悪い例(Before) 全てのデータが同じ色で表現され、凡例や補助線が多く、全体的に情報過多になっている。これでは、どのデータに注目してほしいのか、作り手の意図が全く伝わりません。・良い例(After):ノイズを減らし、主張を明確にする – まず、不要な補助線や枠線、凡例などを削除し、情報をシンプルにします。 – 次に、伝えたいメッセージ(例:「第4クォーターに売上が急増」)をグラフのタイトルとして明記します。 – 最後に、グラフの中で最も注目してほしいデータだけを「アクセントカラー」で強調し、それ以外はグレーアウトさせます。これにより、聞き手の視線を意図通りに誘導できます。③ 関係性が不明な箇条書きを改善する複数の要素をただ箇条書きで並べただけでは、それらの関係性(例:順序、対立、包含)が伝わりません。・悪い例(Before) 「ステップ1」「ステップ2」「ステップ3」という手順が、ただの箇条書きで並んでいる。これでは、視覚的にプロセスの繋がりが理解しにくくなります。・良い例(After):関係性を図解する – 箇条書きを、シンプルな「図解」に変換します。 – 手順や流れなら「矢印」を使ったフロー図 – 比較や対立なら「左右対称」の対比図 – 構成要素なら「包含関係」の図 – このように、要素の関係性を視覚的に表現することで、聞き手は直感的に内容を理解できるようになります。【おわりに】この記事では、営業資料のデザインについて、その目的から具体的な3つの基本原則までを解説しました。しかし、これらの原則を理解しても、いざ自社の資料を前にすると「どこから手をつければ良いか分からない」「本当にこれで伝わるのか自信が持てない」と感じることも少なくありません。私たちGOOD RIGHTは、過去の数々の失敗経験から生まれた「実行伴走型」の支援を得意としています。もし「自社資料のデザインを客観的にレビューしてほしい」「分かってはいるが、デザインを改善する時間がない」と感じたら、まずは無料の壁打ち相談からお気軽にお声がけください。